WBO世界スーパー・ライト級タイトルマッチ ジョシュ・テイラー対テオフィモ・ロペス

  • 2023/06/30

「スコットランドの竜巻」 vs 25歳の「支配者」
オッズは3対2でテイラー有利

 WBO世界スーパー・ライト級王者のジョシュ・テイラー(32=イギリス)が、同級1位にランクされるテオフィモ・ロペス(25=アメリカ)の挑戦を受ける。2021年にこのクラスで4団体王座を統一したテイラーに対し、ロペスもライト級時代にWBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを同時に保持していた実績を持っている。開催地はロペスの地元ニューヨークだが、オッズは3対2でテイラー有利と出ている。

WBSS優勝 S・ライト級の4団体王座を統一したテイラー

 テイラーは2012年ロンドン五輪や2011年、2013年世界選手権に出場するなどアマチュアで150戦以上を経験後、24歳でプロに転向した。地域王座を獲得しながらランキングを上げ、2018年には階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)」シーズンⅡに参戦。準決勝でIBF王座を獲得し、決勝ではWBA王者のレジス・プログレイス(アメリカ)に競り勝って優勝した。2021年5月にはWBC、WBO王者のホセ・ラミレス(アメリカ)との頂上対決に臨み、12回判定勝ちを収めた。
 ジャッジ三者が114対112と採点する僅少差の勝負だったが、中盤に奪った2度のダウンがテイラー優勢を強く印象づけた試合だった。
 4団体統一王者となったテイラーは9ヵ月後、WBO1位のジャック・カテロール(イギリス)を判定で退けたが、8回にダウンを喫したうえ顔面をカット、終盤にはゴング後の加撃で減点されるなど内容は散々だった。そもそもこの試合は前年12月に予定されていたが、テイラーが膝を痛めたために2ヵ月延期された経緯があった。コンディションが十分ではなかったのかもしれない。このあとテイラーは各団体から別々の相手との指名試合を課されるなどしたためWBOを除く3本のベルトを放棄することになった。
 こうしたなか今年3月にはカテロールとの再戦が計画されたが、再びテイラーは足を痛め、試合をキャンセル。今回、相手をロペスに変更して防衛戦に臨むことになった。この2年だけ見ると、敗北こそないもののラミレス戦をピークにして運から見放されつつあるような印象を受ける。

ロマチェンコに勝って事実上のライト級4団体王座統一

 ロペスもアマチュア時代にオリンピック出場の経験がある。こちらは2016年リオデジャネイロ大会に両親の出身国ホンジュラス代表として出場したが、ライト級1回戦で敗退した。170戦150勝20敗の戦績を残し2016年11月にプロデビュー。試合中はもちろん試合後の派手なパフォーマンスでも売り出し、中谷正義(井岡⇒帝拳)ら世界ランカーを連破したあとリチャード・コミー(ガーナ)を2回TKOで破ってIBF世界ライト級王座を獲得した。デビューから3年、2019年12月のことだ。
 10ヵ月後、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBAスーパー王座、WBO王座を保持するワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と対戦し、3対0の12回判定勝ちを収めて事実上の4団体統一王者になった。
 これでロペスの時代到来かと思われたが、その期待はあっさりと砕かれてしまう。
 2021年11月、ジョージ・カンボソス(オーストラリア)に12回判定負けを喫してしまったのだ。ダウン応酬の激闘ではあったが、圧勝が予想されていただけにファンや関係者の落胆は大きかった。
 これを機にスーパー・ライト級に転向し、世界ランカーに2連勝を収めて今回の挑戦に辿り着いた。ただし、直近の試合(2022年12月)ではダウンを喫するなど褒められた内容ではなく、近未来を危ぶむ声が出るほどだった。こちらもロマチェンコ戦で運を使い果たした感さえある。

間合いをとりたいテイラー 距離を潰したいロペス

 やや勢いが失せた印象の両者だが、「タータン・トルネード(スコットランドの竜巻)」と呼ばれるテイラーは19戦全勝(13KO)、「テイクオーバー(支配者)」のニックネームを持つロペスも19戦18勝(13KO)1敗と好戦績を残している。ふたりともスーパー・ライト級のトップに位置づけられる実力者であることは間違いない。
 身長178センチ、リーチ177センチと体格に恵まれたサウスポーのテイラーが適度に足をつかいながら右ジャブで間合いをとろうとするのに対し、ロペスは圧力をかけながら距離を潰しにかかるものと思われる。そこに王者は左ストレートのカウンターを合わせたいところだが、それは挑戦者も警戒しているはず。打撃による攻防だけでなく様々な駆け引きを用いた心理戦もみどころのひとつといえる。
 オッズはテイラー有利と出ているが、ロペスには地の利がある。若いロペスが前半で勢いに乗るようだと中盤、終盤と押せ押せムードになる可能性もある。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    テイラー

    ロペス

  • 生年月日/年齢

    1991年1月2日/32歳

    1997年7月30日/25歳

  • 出身地

    英国スコットランド エディンバラ

    米国ニューヨーク州ブルックリン

  • アマチュア実績

    11年世界選手権ライト級出場
    12年ロンドン五輪ライト級出場
    13年世界選手権ライトウェルター級出場

    16年リオデジャネイロ五輪出場

  • アマチュア戦績

    150戦以上(勝敗数不明)

    170戦150勝20敗

  • プロデビュー

    15年7月(24歳)

    16年11月(19歳)

  • 獲得王座

    4団体統一世界S・ライト級

    4団体統一世界ライト級
    (WBCフランチャイズ王座含む)

  • 世界戦の戦績

    5戦全勝(1KO)

    3戦2勝(1KO)1敗

  • 通算戦績

    19戦全勝(13KO)

    19戦18勝(13KO)

  • KO率

    68%

    68%

  • 身長/リーチ

    178センチ/177センチ

    173センチ/174センチ

  • 戦闘タイプ

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「タータン・トルネード」

    「テイクオーバー」

  • トレーナー

    ジョー・マクナリー

    テオフィモ・ロペス・シニア(父親)

<テイラーの直近6試合の相手と結果>

2018年11月 ○7回TKO 
ライアン・マーティン(アメリカ) 22戦全勝(12KO)
2019年 5月 ○12回判定 
イバン・バランチク(ロシア/ベラルーシ) 19戦全勝(12KO)
※IBF世界スーパー・ライト級王座獲得
2019年10月 ○12回判定 
レジス・プログレイス(アメリカ) 24戦全勝(20KO)
※WBA世界スーパー・ライト級王座獲得
2020年 9月 ○1回KO 
アピヌン・コーンソーン(タイ) 16戦全勝(13KO)
2021年 5月 ○12回判定 
ホセ・ラミレス(アメリカ) 26戦全勝(17KO)
※WBC、WBO世界スーパー・ライト級王座獲得(4団体王座統一)
2022年 2月 ○12回判定 
ジャック・カテロール(イギリス) 26戦全勝(13KO)
※4団体統一王座防衛


<スーパー・ライト級トップ戦線の現状>

WBA
:ローランド・ロメロ(アメリカ)
休養
:アルベルト・プエジョ(ドミニカ共和国)
WBC
:レジス・プログレイス(アメリカ)
IBF
:スブリエル・マティアス(プエルトリコ)
WBO
:ジョシュ・テイラー(イギリス)

 1年ほど前まではジョシュ・テイラー(32=イギリス)が4団体王座を束ねていたが、そのうち3本を放棄。これを受けWBA、WBC、IBFはそれぞれ決定戦を行って新王者を認定している。このうちWBAは2022年8月にアルベルト・プエジョ(28=ドミニカ共和国)を王者として承認したが、初防衛戦を前にドーピング違反が判明したため休養王者にスライドさせ、決定戦でイスマエル・バロッソ(40=ベネズエラ)に9回TKO勝ちを収めたローランド・ロメロ(27=アメリカ)が新王者になった。ただ、ストップのタイミングが早かったため敗者側からクレームが出ており、再戦を含めて今後の成り行きが注目される。
 WBC王者のレジス・プログレイス(34=アメリカ)はかつてWBA王座に君臨した実績を持っている実力者だ。4年前、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」決勝でテイラーに惜敗したが、以後は5連勝(4KO)を収めている。
 IBF王者のスブリエル・マティアス(31=プエルトリコ)は20戦19勝(19KO)1敗の戦績が示すとおりのスラッガーで、リスクを承知で打ち合うため試合は常にスリリングだ。8月に元王者のセルゲイ・リピネッツ(34=カザフスタン)との初防衛戦が決まりそうだが、いまの勢いを考えればマティアスに分のあるカードといえる。
 王者たちと同等の力量を持つと見られているのがテイラーに挑むテオフィモ・ロペス(25=アメリカ)と、16戦全KO勝ちのゲイリー・アントゥアン・ラッセル(27=アメリカ)だ。ともに攻撃力が売りのハードパンチャーで、このクラスを活性化させる可能性を持っている。
 元2団体王者のホセ・ラミレス(30=アメリカ)、28戦全勝(10KO)のアーノルド・バルボサ(31=アメリカ)、22戦全勝(17KO)の平岡アンディ(26=大橋)らも挑戦の機会をうかがっている。

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