IBF世界スーパー・ライト級王座決定戦 ヘレミアス・ポンセ対スブリエル・マティアス

  • 2023/03/03

30戦全勝 vs KO率95%
壮絶な打撃戦のすえにKO決着か

 昨年8月にジョシュ・テイラー(イギリス)が返上して空位になっていたIBF世界スーパー・ライト級王座を、1位のヘレミアス・ポンセ(26=アルゼンチン)とスブリエル・マティアス(30=プエルトリコ)が争う。敵地での挑戦者決定戦を制して最上位の地位を確定させた30戦全勝(20KO)のポンセと、勝利がすべてKO(19戦18勝18KO1敗)というスラッガーのマティアス。攻撃力に自信を持つ選手同士のカードだけに判定勝負は考えにくい。壮絶な打撃戦のすえのKO決着が濃厚だ。

指名挑戦を2年待った南米の雄ポンセ

 2015年9月にプロデビューしたポンセは2017年に6戦、2018年には8戦というハイペースで試合をこなしてきた。世界15傑入りした2019年以降は年間2~3試合に落ち着いたが、その分、対戦相手のレベルが上がった。2021年6月にはイギリスに遠征し、同国の期待を背負っていたルイス・リットソンを10回TKOで撃破。乱打戦のなか執拗にボディを攻め続け、3度のダウンを奪うという印象的な試合だった。
 この勝利でIBF6位から1位にランクアップしたポンセだが、その1ヵ月前にテイラーが4団体の王座を統一したタイミングだったこともあり、挑戦までさらに2年近く待たされることになる。この間、ポンセはドイツで2回KO勝ち、3回TKO勝ちを収めている。テイラーがベルトを放棄したのに伴い、昨年10月15日にはデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)対ロバート・ヘレニウス(スウェーデン/フィンランド)の前座でマティアスとの王座決定戦が決まったが、渡米を前にポンセにビザのトラブルが発生。そのため試合が延期されたという経緯がある。

初の敗北後3連続KOで勢いを取り戻したマティアス

 マティアスはポンセよりも3ヵ月遅れの2015年12月にプロデビュー。年間2~4試合のペースで戦い続け、2019年が終わるときには15戦全KO勝ちという戦績を残していた。このなかには世界挑戦経験者のダリウス・プレスコット(コロンビア)、元世界ランカーのブレイディス・プレスコット(コロンビア)、世界挑戦経験者のフェルナンド・サウセド(アルゼンチン)、さらにIBF3位、WBC4位のマキシム・ダダシェフ(ロシア)を下した勝利が含まれていた。これらの実績が評価され2020年を迎えたときにはIBF2位、WBC3位、WBO10位にランクされるまでになっていた。
 2020年2月、マティアスはワイルダー対タイソン・フューリー(イギリス)Ⅱの前座に出場。近い将来の世界挑戦を前提にした顔見世の意味合いが大きかったのだろうが、意外にもペトロス・アナニャン(アルメニア/ロシア)に不覚をとってしまう。7回に喫したロープダウンが響いて94対95、94対95、96対93の僅差判定で敗れたのだ。
 これで一度は勢いが止まったマティアスだが、再起戦で18戦全勝(11KO)のマリク・ホーキンス(アメリカ)に6回終了TKO勝ちを収めると、次戦でも18戦全勝(14KO)の世界ランカー、バティルザン・ジュケムバエフ(カザフスタン)を8回終了で棄権に追い込んだ。この勝利でIBF2位の座を確定させたマティアスは昨年1月、アナニャンとの再戦に臨み、一方的に打ちまくって9回終了TKOで雪辱を果たした。これが最直近の試合だ。

オッズは7対2 序盤から乱打戦に突入か

 ふたりとも攻撃型の選手で、中近距離での戦いを好む。ポンセはガードを固めた構えで接近を図り、距離が合うと左右フックやアッパーを顔面とボディに打ち分ける。一発の破壊力は特筆するほどではないが、連打は執拗だ。
 マティアスは面倒くさい駆け引きを省略した「肉を切らせて骨を断つ」ボクシングをする傾向がある。よほどパンチ力と耐久力に自信があるのだろう。中近距離での左右フック、アッパーは強烈だ。
 連打で押し込むポンセ、一発の強打で勝るマティアス。持ち味は異なるが乱打戦を厭わないところは共通している。多少の偵察の時間はあるかもしれないが、それが過ぎたら序盤から激しいパンチの応酬が見られそうだ。パンチの破壊力で勝る分だけマティアスにアドバンテージがあると思われるが、7対2のオッズほどの差はないとみる。

<スーパー・ライト級トップ戦線の現状>

WBA
:アルベルト・プエジョ(ドミニカ共和国)
WBC
:レジス・プログレイス(アメリカ)
IBF
:空位
WBO
:ジョシュ・テイラー(イギリス)

 2018年秋から2019年秋にかけて開催された階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」でジョシュ・テイラー(32=イギリス)が優勝。2021年5月にはホセ・ラミレス(30=アメリカ)にも勝って4団体王座の統一を果たした。しかし、2022年になって次々とベルトを手放し、現在はWBO王座だけが手元に残る状態となっている。そのテイラーは4団体王座の防衛戦で大苦戦を強いられたジャック・カテロール(29=イギリス)との再戦に臨む計画だったが、延期を繰り返しているうちにWBOがテオフィモ・ロペス(25=アメリカ)との指名試合を課したため先が読みにくくなっている。決まれば注目度の高い試合といえる。
 WBSS決勝でテイラーに敗れたレジス・プログレイス(34=アメリカ)は昨年11月、ホセ・セペダ(33=アメリカ)を11回TKOで下してWBC王座を獲得。これで4連続KOと勢いを取り戻した印象だ。
 WBA王者のアルベルト・プエジョ(28=ドミニカ共和国)は昨年8月、決定戦を制して現王座を獲得。それ以前の暫定王者時代を含め世界戦4連勝だが、世界的強豪との対戦が少ないためテイラーやプログレイスらと比較するのは尚早といえよう。
 残るIBF王座はヘレミアス・ポンセ(26=アルゼンチン)対スブリエル・マティアス(30=プエルトリコ)の決定戦を経て持ち主が決まる。
 無冠組では、元WBC、WBO王者のラミレスが昨年3月、元世界2階級制覇王者のホセ・ペドラサ(33=プエルトリコ)に12回判定勝ちを収めて再起。次戦で元IBF世界ライト級王者のリチャード・コミー(35=ガーナ)と対戦することが決まっている。
 16戦全KO勝ちのサウスポー、ゲイリー・アントゥアン・ラッセル(26=アメリカ)は、どの王者と対戦しても好勝負が期待できる。焦る年齢でもないため、トップ戦線の動きを見ながら標的を定めることになりそうだ。
 もうひとり、アーノルド・バルボサ(31=アメリカ)にも注目したい。この2月にペドラサに10回判定勝ちを収めて戦績を28戦全勝(10KO)に伸ばしたところだ。ラッセルのような強烈な印象を与えるタイプではないが着実に実力を蓄えてきた。
 22戦全勝(17KO)の平岡アンディ(26=大橋)は8連続KO勝ちで勢いを増してきた。ランキングもWBA9位、WBC16位、IBF9位、WBO13位と好位置につけている。着実に力をつけてきている印象だが、大勝負の前に世界15傑内の強豪とのテストマッチを見てみたいものだ。

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