IBF世界フェザー級タイトルマッチ ルイス・アルベルト・ロペス対マイケル・コンラン

  • 2023/06/16

2戦連続で敵地に赴くロペス
オッズは13対11でコンラン有利

 昨年12月、イギリスのリーズに遠征してジョシュ・ウォーリントン(イギリス)に12回判定勝ちを収めIBF世界フェザー級王座を獲得しルイス・アルベルト・ロペス(29=メキシコ)が、初防衛戦でマイケル・コンラン(31=イギリス/アイルランド)の挑戦を受ける。試合地のイギリス北アイルランドのベルファストは挑戦者の地元だけにロペスは激しいブーイングのなかで戦うことになりそうだ。オッズは13対11でコンラン有利と出ている。

 ロペスは2015年11月、22歳のときにメキシコでプロデビュー。2019年2月、初のアメリカ遠征でWBOインターナショナル王座を獲得して世界ランク入りを果たしたが、2ヵ月半後にルーベン・ビラ(アメリカ)に敗れて15傑から名前が除外された。このまま忘れられた存在になってしまうのかと思われたが、2021年9月、ロペスはオスカル・バルデス(メキシコ)対ロブソン・コンセイサン(ブラジル)、中谷潤人(MT)対ルイス・アコスタ(プエルトリコ)のイベントに出場。当時、20戦全勝と売り出し中だったWBO11位のガブリエル・フローレス(アメリカ)に一方的な10回判定勝ちを収め、トップ戦線に戻ってきた。
 3ヵ月後、今度はイギリスに遠征してIBF世界フェザー級挑戦者決定戦に臨み、24戦無敗のアイザック・ロー(イギリス)から計3度のダウンを奪って7回KO勝ちを収めた。これを機にトップランク社とプロモート契約を交わし、世界挑戦の準備が完了。そして昨年12月、相手のホームに乗り込んでウォーリントンを攻略、現在の王座を獲得したというわけだ。
 29戦27勝(15KO)2敗とKO率は52パーセントほどだが、その数字以上にパワフルな印象を受ける。スムーズさに欠ける動きから振りの大きな左右フックで迫る攻撃型で、自身のガードは甘いが耐久力には優れているようだ。

 挑戦者のコンランはアマチュア時代に2度のオリンピック出場(2012年ロンドン大会では銅メダル獲得)と3度の世界選手権出場(2015年は優勝)を果たしたスター選手で、トップランク社と契約してプロに転向した。しばらくはマッチメーク面で同社の庇護下にある印象が強かったが、2021年8月には元世界王者のTJドヘニー(アイルランド)を破ってWBA暫定世界フェザー級王座を獲得した。
 同じ月にWBAが暫定王座制度を廃止したため無冠に戻ったが、2022年3月にはWBA王者のリー・ウッド(イギリス)に挑戦。初回に痛烈なダウンを奪ったものの、これでオーバーペースになったのかコンランは中盤から失速し、11回には軽いダウンを喫した。それでもポイントではリードを奪っていたが、最終12回に力尽きた。王者の強打を浴びてロープ外に叩き出されるという衝撃のTKO負けだった。
 戦績は19戦18勝(9KO)1敗。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、相手が出て来れば迎え撃ち、攻めて来なければ自分から出ていく臨機応変さを備えている。ウッド戦で底を見せてしまった感があるが、その後は世界挑戦経験者のミゲール・マリアガ(コロンビア)、元世界ランカーのカリム・グエルフィ(フランス)に連勝しており、復調の気配をみせている。

 オッズは13対11で挑戦者有利と出ているが、これは地元のコンランに対する期待値が含まれているものと思われる。
 敵地ということもありロペスが積極的に前に出ていくことは確実といっていいだろう。飛び込みながら振りの大きなパンチでコンランを追い込みたいところだ。
 これに対し挑戦者がどんな戦術を選択するのか注目される。真っ向からの打ち合いを選択するのか、慎重に間合いをとって迎え撃つのか、その折衷策を採るのか。コンランには地元の利がある一方、大声援に背中を押されるため攻撃的にならざるを得ないというジレンマを抱えることになりそうだ。ゆえに多少のリスクを覚悟のうえで打ち合う可能性が高いとみる。それはロペスにとって望むところでもある。

<フェザー級トップ戦線の現状>

WBA
:リー・ウッド(イギリス)
WBC
:レイ・バルガス(メキシコ)
暫定
:ブランドン・フィゲロア(アメリカ)
IBF
:ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
WBO
:ロベイシー・ラミレス(キューバ)

 2021年以降、下記のとおり4団体のベルト保持者は目まぐるしく入れ替わっている。

WBA
:シュー・ツァン(中国) ⇒ リー・ウッド(イギリス) ⇒ マウリシオ・ララ(メキシコ) ⇒ リー・ウッド(イギリス)
WBC
:ゲイリー・ラッセル(アメリカ) ⇒ マーク・マグサヨ(フィリピン) ⇒ レイ・バルガス(メキシコ)
IBF
:キッド・ガラハド(イギリス) ⇒ キコ・マルチネス(スペイン) ⇒ ジョシュ・ウォーリントン(イギリス) ⇒ ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
WBO
:エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ ※返上) ⇒ ロベイシー・ラミレス(キューバ)

 メキシコとイギリスの争奪戦が多いという特徴がみられる。昨年7月に王座を獲得したWBC王者のレイ・バルガス(32)が最も在位が長いが、それでも1年に満たない。IBF王者のルイス・アルベルト・ロペス(29)は昨年12月、WBC暫定王者のブランドン・フィゲロア(26)が今年3月、WBO王者のロベイシー・ラミレス(29)が4月、WBA王座を奪回したリー・ウッド(34)が5月といずれも最近の戴冠だ。2階級制覇のバルガス、フィゲロアを含め、この階級においては5人とも評価を定める段階ではないといえる。
 こうしたなか元東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王者の清水聡(37=大橋)が7月25日、WBO王者のラミレスに挑戦することが決まっている。2012年ロンドン五輪銅メダリストの清水と五輪で2大会連続金メダリストのラミレス。王者有利は動かせないが、変則型の長身サウスポーの清水にもチャンスがありそうだ。
 IBFでは阿部麗也(30=KG大和)が指名挑戦者として待機している。今回のロペス対コンランの試合内容、結果が大いに気になるところであろう。
 さらに1年後、2年後と枠を広げてみれば日本王者の松本圭佑(23=大橋)、東洋太平洋王者の堤駿斗(23=志成)らが王座争奪戦に加わっている可能性がある。

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