WBC世界フェザー級暫定王座決定戦 ブランドン・フィゲロア対マーク・マグサヨ

  • 2023/03/10

2階級制覇か 返り咲きか
連打型のフィゲロアにアドバンテージ

 レイ・バルガス(メキシコ)がWBC世界フェザー級王座を保持したままスーパー・フェザー級王座決定戦に出場することを受けて行われる暫定王座の決定戦。1位のブランドン・フィゲロア(26=アメリカ)は元WBA、WBC世界スーパー・バンタム級王者で、現在はWBC世界フェザー級1位にランクされている。一方、3位につけているマーク・マグサヨ(27=フィリピン)はバルガスの前の王者で、再起戦が即世界戦となる。スイッチしながら連打で攻め込むフィゲロア、右ストレートや左フックを中心にパンチ力のあるマグサヨ。序盤から緊迫感のある試合になりそうだ。

攻撃型のスイッチヒッター フィゲロア

 フィゲロアは元WBC世界ライト級王者のオマール・フィゲロアの7歳下の弟で、2019年4月にWBC暫定世界スーパー・バンタム級王座を獲得(のちに正王者に昇格)。3度防衛後、2021年5月にはWBC王者のルイス・ネリ(メキシコ)をボディブローで7回KOで屠り2団体の王座を手にした。その半年後、WBO王者のスティーブン・フルトン(アメリカ)と戦ったが、リングインと同時にWBA王座を剥奪され、試合では12回判定負けを喫してWBC王座も失った。しかし、ジャッジのひとりが114対114のイーブンと採点したように内容は競ったもので、フィゲロアを支持する識者やファンもいたほどだった。
 もともと減量苦だったフィゲロアはフルトン戦を機にフェザー級に転向。昨年7月にはカルロス・カストロ(メキシコ)との挑戦者決定戦に臨み、6回TKO勝ちを収めてWBC世界フェザー級1位の座を確定させた。マグサヨ戦が再起第2戦になると同時に転級第2戦ということになる。戦績は25戦23勝(18KO)1敗1分。構えを右から左、左から右と頻繁に変えながら戦うスイッチヒッターで、中近距離での打撃戦を好む。自身の被弾も多く、肉を切らせて骨を断つリスキーな戦闘スタイルといえる。

ラッセルを攻略したマグサヨ バルガス戦は惜敗

 マグサヨは2013年5月にフィリピンでプロデビューし、2015年と2016年には同国出身の先輩、ドニー・ニエテスの前座としてアメリカ西海岸のリングに上がったこともある。大きな転機は2020年に元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)のMPプロモーションと契約を交わしたことだろう。同時に名匠の誉れ高いフレディ・ローチ・トレーナーに師事することとなったマグサヨは主戦場をアメリカに定め、2021年8月にはWBC世界フェザー級挑戦者決定戦でフリオ・セハ(メキシコ)と対戦。ダウン応酬の激闘となったが、10回に右ストレートを叩きつけて痛烈なKO勝ちを収めた。ちなみにセハは2019年11月にフィゲロアと対戦して引き分けているが、そのときはセハが体重超過だったため参考資料としては不向きだろう。
 セハ戦における評価が分かれたマグサヨだが、5ヵ月後のゲイリー・ラッセル(アメリカ)戦で競り勝ってWBC世界フェザー級王座を獲得してみせ、地力があるところを証明した。半年後の初防衛戦ではバルガスに僅少差の判定負けを喫したが、9回に右ストレートでダウンを奪うなど見せ場もつくった。10年のプロ生活で喫した敗北は、このバルガス戦の一度だけだ(25戦24勝16KO1敗)。攻撃型だけにディフェンスに甘さはあるが、左フック、右ストレートに加えアッパー系のパンチも強い。

オッズは5対2でフィゲロア有利 序盤から打撃戦か

 5対2というオッズが出ているようにフィゲロア有利は動かない。下の階級から上げてきたとはいえフィゲロアは身長173センチ、リーチ184センチと体格に恵まれており、それぞれマグサヨを5センチ、11センチ上回っている。昨年7月、挑戦者決定戦を勝ち抜いておりフェザー級でのテストマッチが済んでいる点も好材料といえる。今回も構えを左右に変えながら接近を図りボディから顔面と連打を浴びせてKO勝ちを狙うものと思われる。セハ戦でマグサヨがボディを攻められてダウンを喫しているだけに、フィゲロアがそこを狙っていく可能性は高い。
 これに対しマグサヨは切れのある右ストレート、左フックで応戦し、近距離ではアッパーで迎え撃ちしたいところだ。これらがタイミングよく命中すればKO勝ちが見えてくる。
 戦闘スタイルは異なるが、ふたりとも攻撃型だけに序盤から目の離せない展開になりそうだ。

<フェザー級トップ戦線の現状>

WBA
:マウリシオ・ララ(メキシコ)
WBC
:レイ・バルガス(メキシコ)
IBF
:ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
WBO
:空位

 WBA王者のマウリシオ・ララ(25=メキシコ)は今年2月、リー・ウッド(34=イギリス)を7回TKOで破って王座を獲得。IBF王者のルイス・アルベルト・ロペス(29=メキシコ)は昨年12月にジョシュ・ウォーリントン(32=イギリス)を攻略して戴冠を果たした。イギリス対メキシコという組み合わせの王座争奪戦はメキシコの2勝という結果になった。2試合ともイギリス開催だっただけに同国ファンや関係者の落胆は小さくないだろう。新王者のララとロペスはパンチ力のある好戦派だが、長くベルトを守るタイプには見えない。評価を定めるのは数戦先になりそうだ。
 WBC王者のレイ・バルガス(32=メキシコ)は王座を保持したままオシャキー・フォスター(アメリカ)とのWBC世界スーパー・フェザー級王座決定戦に出場。そのため今回の暫定王座決定戦、ブランドン・フィゲロア(26=アメリカ)対マーク・マグサヨ(27=フィリピン)が組まれた経緯がある。
 WBO王座はエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)が持っていたが、2月にスーパー・フェザー級のWBO王座を獲得した直後に返上。空位の王座はアイザック・ドグボエ(28=ガーナ/イギリス)とロベイシー・ラミレス(29=キューバ)で争われることになっている。
 こうして見てくると現在のフェザー級は動きが多いクラスであることが分かる。ランカー陣を見ても飛び抜けた存在はいない。4月にキコ・マルチネス(36=スペイン)とのIBF挑戦者決定戦に臨む阿部麗也(29=KG大和)にも十分にチャンスがありそうだ。人気のあるマイケル・コンラン(31=イギリス/アイルランド)も年内に王座に絡んでくるものと思われる。

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