WBC暫定世界スーパー・ウェルター級タイトルマッチ セバスチャン・フンドラ対ブライアン・メンドサ

  • 2023/04/28

「タワーリング・インフェルノ」vs「弾丸」
オッズは8対1 暫定王者有利だが…

 体重リミットが154ポンド(約69.8キロ)のスーパー・ウェルターで規格外ともいえる身長197センチ、リーチ203センチのWBC暫定世界スーパー・ウェルター級王者、セバスチャン・フンドラ(25=アメリカ)が、WBC17位のブライアン・メンドサ(29=アメリカ)を相手に2度目の防衛戦に臨む。オッズは8対1、圧倒的にフンドラ有利と出ている。

リングに聳え立つ「タワーリング・インフェルノ」

 スーパー・ウェルター級におけるフンドラの体格的なアドバンテージは特別なものがある。なにしろ同じ階級の4団体統一王者のジャーメル・チャーロ(アメリカ)が183センチ/185センチ、WBO暫定王者のティム・チュー(オーストラリア)は174センチ/183センチ、大柄といわれる元王者のトニー・ハリソン(アメリカ)が185センチ/194センチなのだ。フンドラの197センチ/203センチはヘビー級の3団体統一王者、オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)の191センチ/198センチを上回る数値でもある。ニックネームは「タワーリング・インフェルノ」。超高層ビル火災の恐怖とパニックを描いた映画名を冠している。
 加えてフンドラはサウスポーという利点も持っている。ただし、フンドラはこうした優位性を存分に生かして戦うタイプではない。むしろ逆に比較的近い距離で戦うケースが目立つ。長身である点は自然とアドバンテージにはなっているものの、腕を小さく折り畳んで横から引っかけたり下から突き上げたりすることが多く、それらのパンチが主武器になっているのだ。暫定王座を獲得したエリクソン・ルビン(アメリカ)戦では2回に死角から右アッパーを突き上げて先制のダウンを奪っている。その後もコツコツとパンチを当てて相手の顔面を腫らして棄権に追いやった。7回にフンドラ自身もダウンを喫したものの立ち上がって勝利をものにしており、存在感を示した試合といえる。

元王者を倒して勢いづく「弾丸」

 メンドサはアマチュア時代の2012年に全米ゴールデングローブ大会に初出場(ライト・ウェルター級初戦敗退)し、翌年は同大会でウェルター級ベスト8入りを果たしている。2014年5月にプロデビューし、5年間に18連勝(13KO)をマーク。19戦目に初黒星を喫したが、次戦で世界挑戦経験者のトーマス・ラマンナ(アメリカ)に10回判定勝ちを収めた。1年後、快進撃を続けていたヘスス・ラモス(アメリカ)には10回判定で敗れたが、半年後に再起。昨年11月、デビッド・モレル(キューバ)対アイドス・イェルボシーヌリー(カザフスタン)の前座に出場し、元世界王者のジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)を5回、右アッパー一発で沈めた。これが最新試合だ。
 23戦21勝(15KO)2敗と驚異的なKO率を残しているわけではないが、ロサリオを仕留めた右アッパーをはじめ右ストレートや左フックなど危険なパンチを持っているだけに侮れない。ニックネームは「La Bala(ラ・バラ)」弾丸。

パンチが当たる距離に詰められるか

 フンドラが右ジャブで牽制しながら左ストレート、右フックを引っかけ、相手が入ってきたら左アッパーで迎え撃つことになりそうだ。身長、リーチとも178センチのメンドサはそれぞれ19センチ、25センチ劣っており、まずはパンチが当たる距離に間合いを詰めなければならない。その作業に戸惑っている時間が長ければ比例してダメージも積み重なることになりそうだ。8対1のオッズが示すようにフンドラ有利は不動といえるが、いつ、どこで飛び出すか分からないメンドサの「弾丸」には最大限の注意が必要だろう。

<スーパー・ウェルター級トップ戦線の現状>

WBA S
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
暫定
:セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
IBF
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBO
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
暫定
:ティム・チュー(オーストラリア)

 ジャーメル・チャーロ(32=アメリカ)が2022年5月にブライアン・カスターニョ(33=アルゼンチン)に10回KO勝ちを収めて4団体の王座を統一したが、その間、防衛戦をこなせなかったことからWBCは暫定王座を設置し、決定戦を制したセバスチャン・フンドラ(25=アメリカ)が戴冠。また、チャーロは今年1月にティム・チュー(28=オーストラリア)の挑戦を受けることになっていたが、手を負傷したためキャンセル。これを受けWBOも暫定王座の設置を決め、元王者のトニー・ハリソン(32=アメリカ)との決定戦を9回TKOで制したチューがベルトを手にしている。
 チャーロ政権が揺らいでいるわけではないが、負傷によるブランクの影響やチューのような若くて勢いのある選手が台頭してきているだけに安泰とは言い切れないものがある。
 IBFとWBOで1位にランクされる21戦全勝(15KO)のバフラム・ムラタザリエフ(30=ロシア)、「ブラック・ライオン」の異名を持つ24戦全勝(13KO)のマゴメド・クルバノフ(27=ロシア)、先物買いになるが20戦全勝(16KO)のサウスポー、ヘスス・ラモス(22=アメリカ)らも遠くない将来、タイトル争いに絡んできそうだ。

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