WOWOW TENNIS ONLINE

大会展望

男女ともに2強優勢、彼らに挑むのは…? 日本勢も見どころ十分

R・ナダル/錦織 圭

R・ナダル Photo:アフロ
錦織 圭 Photo:CameraSport/アフロ

 パリの赤土からウィンブルドンの芝へ…ドーバー海峡を隔ててテニスの風景は一変し、プレーヤーは心と技の切り替え、順応力を試される。

 ドローが発表された。まず気付くのは、男子の第1シードが世界1位に返り咲いた一昨年の覇者ラファエル・ナダルではなく、過去ウィンブルドン6度の優勝を誇るディフェンディング・チャンピオンのロジャー・フェデラーということ。芝の実績を重視するウィンブルドン独自のシード制度のなせる業だ。

 しかし次の瞬間、シード順などどうでもよくなった。全仏王者、そして2年ぶりにウィンブルドンに戻ってくるナダルの最初の相手は、なんと錦織圭だ。予選覚悟だった錦織はワイルドカードで本戦入りを果たしたのだが、いきなりナダルとは…。恐らくセンターコートに入るだろう。“不運”と言うのはよそう。錦織ならきっと「楽しみ」と言うはずだ。

 また、予選の3回戦で敗れた添田豪が“ラッキールーザー”で本戦入りを果たした。2007年の全豪オープンに続く2度目のグランドスラムだが、本戦に日本男子が2人以上名を連ねるのは1994年以来16年ぶり。全仏に続き、ウィンブルドンも日本にとって朗報で幕を開ける。

 話を戻そう。昨年の優勝でグランドスラム通算優勝回数を史上最多の15としたフェデラーは、大記録達成でここのところモチベーションの低下も心配されているが、舞台がウィンブルドンとなれば話は別だ。特にナダルには08年の全仏、ウィンブルドン、09年の全豪とグランドスラムでは3連敗中だけにここは譲れない。

クルム伊達公子/S・ウィリアムズ

クルム伊達公子 Photo:アフロ
S・ウィリアムズ Photo:アフロ

 ランキングとシード順位が違う選手はほかにもいる。たとえばアンディ・ロディックは7位だが第5シード。04年、05年、09年と3度決勝で敗れたものの、その相手は全てフェデラーであり、特に昨年の素晴しい戦いぶりは評価に値する。フェデラーとは準決勝であたるドローだが、もう優勝トロフィーしか要らないロディックにとっていずれ倒さなければならない敵だ。

   ノバク・ジョコビッチとアンディ・マレーはそれぞれランキング通りの第3、第4シード。74年ぶりの自国チャンピオン誕生を待ちわびる英国のファンの熱狂の中、マレーが初の決勝進出を果たすには準決勝でナダルを倒さなくてはならない。

 前哨戦のハレでフェデラーを破って優勝したレイトン・ヒューイットは26位にもかかわらず第15シードをもらった。第9〜16シードにはクロアチアの21歳マリン・チリッチ、全仏ベスト4のトマーシュ・ベルディヒなど危険な顔が並んでいる。

 一方、女子のシードはランキング通りだが、全仏で右ふくらはぎを痛めた影響で5位のエレナ・デメンティエワが欠場。全仏に続いてウイリアムズ姉妹の“ワンツー・シード”だ。故障明けのクレーでは調子の上がらなかったセレナが多少気がかりではあるが、過去10年の記録を見ればそれも吹っ飛ぶ。姉妹のどちらかが優勝した回数は8回(ビーナス5回、セレナ3回)。姉妹以外の優勝者でなお現役はマリア・シャラポワただひとり。17歳での初優勝が今なお鮮烈なはずだ。そのシャラポワをセレナは4回戦で迎えなくてはならないのは、かなり惜しいカード。

 芝に来ると特に輝くシャラポワに、前哨戦のタイトルを譲らなかったのは中国のリー・ナだ。全豪でそろってベスト4入りしたジェン・ジーともども芝は得意。中国勢の快挙再びもあるかもしれない。

 もったいないといえば、キム・クライシュテルスとジュスティーヌ・エナン。ベルギーの元女王2人が、順当にいけば4回戦で対戦となってしまう。エナンはウィンブルドンに優勝すれば生涯グランドスラムを達成できるが…。

 こうしたベテラン勢の話題に押されがちだが、第3シードの19歳のカロライン・ウォズニアッキ、過去2年連続ベスト8の21歳アグネツカ・ラドバンスカ、昨年ベスト8の20歳ビクトリア・アザレンカら若手がどこまで上位に食い込めるか。

 若手の奮起に期待したいのは日本も同じ。今回は39歳のクルム伊達公子、20歳の森田あゆみの本戦ストレート入りに加えて、予選から18歳の奈良くるみが勝ち上がってきた。3人とも格上が相手だが、悲観するドローではない。森田と奈良にはグランドスラム初勝利がかかっている。開幕の朗報をできるだけ長く引き延ばしてほしい。

文・山口 奈緒美(やまぐち・なおみ)

Not Found
Not Found Not Found